*

「経営リーダーのための社会システム論」の視点は面白い!という読書感想文

公開日: 気になる本, リーダーシップ

日本一古いおでん屋「たこ梅」の 雑用係 兼 五代目店主 てっちゃんです

経営リーダーのための社会システム論

大学院大学 至善館の講座録のような形式で綴られる「経営リーダーのための社会システム論」(宮台真司 × 野田智義)を先日読みました

今年のゴールデンウィークあたりに読んだ「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」以来、「これは面白い!!」と思った本です

「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」についてはこちらのブログをご覧下さい
「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」を読んで

経営リーダーのための社会システム論(宮台真司×野田智義)

経営リーダーのための社会システム論(宮台真司×野田智義)

この本を読んで私の理解と気づいたことを列挙していきます

「社会の底抜け」と「汎システム化」

「日本では社会の底が抜けている」という衝撃的でもあり、どういうことか?とも考えさせられるところから、現実、これまでの過去、そして未来に向けて宮台真司さんと野田智義の対話を中心に、講座生の意見、質問を挟みながら進んで行きます

グローバル化のなかで途上国の構造的貧困は以前に比べ緩和されたものの、先進国、途上国を問わず冨の超偏在、排他主義など新たな構造的問題が生じているものの勧善懲悪的な「絶対悪」がないことが、この問題をさらに複雑に見せている

これは、効率性を目指す、言い換えるとより効率的に「お金」を稼ぐためによりシステム化されてきたことの帰結であり、現在もテック化という言葉で表されるように「汎システム化」がますます進行する

「システム世界」と「生活世界」

この世の中を「システム世界」と「生活世界」という見方で捉えてみる
システム世界は例えばコンビニであり、「安全・便利・快適」の追求である
システム世界は、効率的であることが求められ、人も機械もすべて決まった機能を果たす(余計なことはしてはならない)システムの歯車なので入替が可能である
個々での大きな課題は、これを推進しているのが為政者というよりも、その安全、便利、快適をのぞむ人間の欲求下支えしている
そして、善良なビジネスパーソンがこれを現実化するためによりシステム化が進んでいるのである
アマゾンの歩みをみると私はこのことがとても理解しやすかった

一方、生活世界のそれは(今は絶滅危惧種だが)町の八百屋や魚屋さんである
生活世界では、人と人のコミュニケーションで成り立っており、人は各々が独特の存在なので代替がきかない
ただ、人との関係の歴史が紡ぐものであるため、関係構築やつきあいという維持にコストがかかる
これを嫌うと簡単にシステム世界に侵食される
関係性を煩わしいと思った瞬間にシステム世界が滑り込んでくる
ひとつの究極的な象徴が映画MATRIXで人類が羊水ベッドで寝たままに夢というVRの世界に生きる姿だろうと思う

3段階の郊外化と共同体の崩壊

システム世界は、安全、便利、快適という便益をもたらしてくれるが、人との関係性が希薄になり、人の精神を病ませる側面をもつ
家族、親戚関係、地域関係という人の関係性をバラバラにする特性がある

地縁共同体が解体の危機に瀕し祭りや互助がなくなり、核家族化からひとりひとりがSNSやソーシャルゲームの世界に没入、さらに関係性が分断されている

三段階の郊外化

三段階の郊外化(P151)

そのあとは、人と人のつながりではなく、便益でのつながり、不満を共有したつながりが助長される
例えば、ヘイトスピーチなどがその代表といえると思う

人は、孤独に耐えられない
そもそもわれわれホモ・サピエンスは、集まることで生き残ってきた遺伝子を受け継いでいて、人間関係が希薄になると「感情の劣化」が起こりやすい
これが、自殺増加や無差別殺人、排他主義などへ駆り立てる基礎的な要因になっているのでは無いかと思う

感情的能力「ピティエ (pitie)」

ジャン・ジャック・ルソーが理想とした直接民主制の社会に必要不可欠な能力が「ピティエ (pitie)」という感情的能力
哀れみと訳されたりしますが、ルソーのいう「ピティエ (pitie)」は、「個人が、自分子とだけを考えるのではなく、みんなのことを考える」という感情的能力を意味します
同意と言うことではなく、相手の言っていることがその気持ちと共にわかるということだと思います

NVC(Non-violent communication)でいう他者共感(他者理解)とほぼ同義では無いかと今の私は理解しています
また、発達心理学の観点で言うと、相手の視点がとれる「他者依存段階(慣習的段階/アンバー/キーガンモデル発達段階3)」では不十分で、本当に相手のことを理解するためには自分のことを理解できる、つまり、単に社会的、慣習的な善や価値観(他者依存段階/アンバー)では無く、自分自身、個としての考えや価値観が確立されている「自己主導段階(オレンジ/キーガンモデル発達段階4)」であるということだろうと思います

さて、この「ピティエ (pitie)」が欠如した例として、アメリカのサンディスプリングスの例が紹介されています
かいつまむともともとフルトン群に属していましたが、富裕層とそれに賛同する中間層が住民投票でサンディスプリングスとして独立し、警察、消防以外は民間委託で行政コストを徹底的にカット、警備などの安全保障にふりむけました
これにより、ますます富裕層が集まり繁栄している町です
一見成功事例に見えますが、その影で、フルトン群では、公立病院や図書館、ゴミ収集などの公共施設、サービスが劣化、残された市民生活レベルが低下しています
この本では、サンディスプリングスの実態は、損得勘定に走る「あさましい人たち」の集まりと断じています

社会の分断が顕著に現れている事例だと私も思います
そして、この分断は、遅かれ早かれ、自分たちに跳ね返ってくるか、全体としての社会という世界を崩壊に推し進めているのだろうと思います
ただ、これが起こるのが住人の寿命より長い場合、彼らは気にならない、つまり「見えない」(=自分の問題ではない)のが、この問題のポイントのひとつではないかと私は読みながら思っていました
世界全体、世界がつながっているものとして見えるかどうかがカギなのではないでしょうか

本の中では「われわれ意識」が維持できなくなるという言い方をしていましたが、、、

システム世界の全域化と共同体の空洞化

システム世界がこのようの中を侵食し、席巻する「システム世界の全域化」という課題が起こっている
システム世界の全域化は、個人の感情を劣化させ、統治コストを増大させる
この本では、アメリカ的アプローチとヨーロッパ的アプローチを紹介している

アメリカ的アプローチとヨーロッパ的アプローチ

アメリカ的アプローチとヨーロッパ的アプローチ

アメリカ的アプローチでは、人が「快・不快」で動く動物と捉えて、そんな動物を構造や仕組みで管理しようとする
管理(ほぼ飼育か?)されることでストレスがたまるが、そのために、(医者で処方される)合法ドラッグやVRで補おうというものである
「マクドナルド化をディズニーランド化で埋め合わせるマッチポンプ」という言い方を本の中ではしています
システムが生み出す苦痛をシステムで埋め合わせよう、補おうというやり方です
この先には、映画Matrixのような世界、近い将来ではメタバースがこの一翼を担うように思います

「よい社会」と「共同体」そして「リーダーシップ」

人はみなよかれ、あるいは、不快をさけ快の方へ行動し、それをサポートしているのがアメリカ的アプローチ、システム世界を遍くいきわたらせようとする進み方です
私は、システム世界は便利な反面、人が人であることが失われるような危惧を抱いていてひょっとしたら不便かもしれないけど、コーヒーメーカーでなく湯を沸かしてドリップで自分でコーヒーを入れるのも楽しいし意味を感じます

「安全・便利・快適」な社会が本当に「よい社会」なのだろうか?
その問いから、自分にとって、家族にとって、仲間にとってどういう社会がいい社会なのかを意見交換から対話の中で見出して、自分なりに理解すること、各々の理解を共有することが大切なんじゃなかろうかとこの本を読んでいておもいました

共同体自治構築に求められる資質とリーダーシップ

共同体自治構築に求められる資質とリーダーシップ

この本を読んでいると、システム世界の進行はとどまらず行くところまでいきそうに思えてきて、救いがない荒涼なきもちになってきました

最終章である第8章でひとつの方向性を示しています
システム世界やテックと共存しながら、小さな地域から共同体自治をつくっていき「われわれ意識」を育む漸進的なアプローチです
ここでは、話し合い、会議をするときでも、「われわれ意識」を持てるようにサポートするリーダーシップが必要で、先頭に立って引っ張るというより縁の下の力持ちのような感じです
その要件が「信頼」なんだそうですが、これを目にしたときネイティブアメリカンの「長老」を私はイメージしました
エルダーシップという種類のリーダーシップです

最近VUCAという言葉をよく耳にするようになりましたが、先行きが不透明、絶対的な正解のない今の世の中では、確かにエルダーシップ的リーダーシップが必要というは私も頷けます

「経営リーダーのための社会システム論」を読んで

この本を読んでいて、何か正解があるというより、読みながら自分で考えさせられる本でした

今日のブログは、今この瞬間の私の理解や気づきをスナップショットとして覚書的に書いたものです

講義録的な誌面なので、読みやすいですし、おそらく私と同じように、何度も「私だったら、、、」と考えさせられて、それもこの本の面白さになっています

この本を読んだおかげで、テクノロジー哲学という分野があるそうですが、ちょっと、そっちが気になってきて年末に向けて、その方面も少し学んでいきながら世界を見る目を養っていこうと思います

LINEのデジタル部員証を登録(無料)してね

さて、システム世界と生活世界、いずれも必要というなかで、たこ梅も、部員さんへのお知らせはシステム世界のツールであるデジタル部員証を活用し、お店というリアル空間で生活世界での体験を大切にしていきます

季節ものやイベントのお知らせ、明るく楽しい「えこひいき」をタイムリーに受け取ってもらえるように、FUN倶楽部やLINE部員の登録をお願いします

ですので、部員登録がまだの方は、今すぐ登録(無料)出来るLINE部員登録して下さい

「たこ梅LINE部員」のデジタル部員証(スマホ用)

「たこ梅LINE部員」のデジタル部員証(スマホ用)

LINEの友だち登録で、たこ梅LINE部員になると、、、

【デジタル部員証のいいところ】

・たこ梅の明るい「えこひいき」が届きます
スタンプカードで楽しい特典があります
ポイントも貯まります(利用は3回来店でFUN倶楽部入部から)
・季節の関東煮(おでん)、珍味、酒のお知らせがタイムリーに届きます
・ビール工場見学、酒蔵見学、ミニ四駆大会などの楽しいイベントのお知らせがいち早く届きます
・そして、人生が(今より)ちょっと、楽しくなります

いろんな明るい「えこひいき」があるし、季節の関東煮(おでん)、珍味の情報がタイムリーに届きます

LINEの友だち追加QRコード

友だち追加

スマホから、このQRコードをスキャンか「友だち追加」ボタンをタップ(クリック)して、友だちに追加してください

デジタル部員証の詳しいことや登録方法については、こちらのブログに書いているのでご覧ください
たこ梅のデジタル部員証の詳しい内容、登録方法について

今すぐ、LINEの友だち登録をして、たこ梅を楽しんで下さい!

The following two tabs change content below.
たこ梅 五代目店主 てっちゃん
大阪の道頓堀で創業180年の「関東煮(おでん)」と「たこ甘露煮」の上かん屋『たこ梅』の雑用係で五代目の てっちゃん(岡田哲生)です さらに百年後も店が続くために取り組んでいる日々の活動を綴ります ところで、ヨガと瞑想を始めました!! おかげさまで、心身ともにエエ感じです

関連記事

「エクサスケールの衝撃」(齋藤元章 著)

「エクサスケールの衝撃」(齋藤元章 著)とシンギュラリティーのインパクトは、、、

今年の元旦に書いたブログで、4月13日までに12冊の本を読む!と宣言しました 4月13日まで

記事を読む

「奇跡の経営」「セムラーイズム」(リカルド・セムラー 著)

「奇跡の経営」だけでなく「セムラーイズム」も読んだ方がいい理由(わけ)

7月に、リカルド・セムラーの「奇跡の経営」を購入しました 「奇跡の経営」(リカルド・セムラー

記事を読む

入門 インテグラル理論(鈴木規夫・久保隆司・甲田烈 著)

「入門 インテグラル理論」やっとこさ読み始めます

4年前の3月にビル・トルバート博士の「行動探究(Action Inquiry)」ワークショップに参加

記事を読む

ワクワク系マーケティングの本をもつ安藤店長

価値創造の思考法、「お店」は変えずに「悦び」を変えろ!(小阪裕司 著)を安藤店長にプレゼント!

昨年、一昨年と、たこ梅のスタッフさんが、5月から翌年1月まで、何度か、新横浜まで通ってます ワクワ

記事を読む

「NVC 人と人の関係にいのちを吹き込む法」はたこ梅文庫に7冊

どーでもいい情報ですが「NVC 人と人の関係にいのちを吹き込む法」はたこ梅文庫に7冊あります

日本一古いおでん屋「たこ梅」の 雑用係 兼 五代目店主 てっちゃんです 昨日、NVC(Nonv

記事を読む

スタッフさんが、たこ梅文庫に寄贈してくれた本

スタッフさんが、たこ梅文庫に本を寄贈してくれました!

うちの事務所には、書架が数台並んでいて、現在、500-600冊くらいあります 「たこ梅文庫」

記事を読む

自意識と創り出す思考(ロバート・フリッツ、ウェイン・S・アンダーセン 著)

「自意識と創り出す思考/IDENTITY」(ロバート・フリッツ、ウェイン・S・アンダーセン 著)を再読です

昨年、ロバート・フリッツ夫妻が来日したとき、「創り出す思考」ワークショップを女神山(長野県)で受講し

記事を読む

ザ・メンタルモデル、ザ・メンタルモデル ワークブック

ときどき復習で、ザ・メンタルモデル ワークブックを使います

日本一古いおでん屋「たこ梅」の 雑用係 兼 五代目店主 てっちゃんです たこ梅のお店では、自分

記事を読む

「人が成長するとは、どういうことか」発達志向型能力開発のためのインテグラル・アプローチ(鈴木規夫 著)

「人が成長するとは、どういうことか」鈴木規夫 著 500ページ超を無謀にも4日で読む計画、、、です ^^;;;

日本一古いおでん屋「たこ梅」の 雑用係 兼 五代目店主 てっちゃんです 分厚い本がやってきまし

記事を読む

付箋をつけられた書籍

簡単にできる頭に入る本の読み方!最近、これやってます

平均すると、どうも、月に2冊前後、本を読んでいるようです 世間では、色んな本を読む読み方があるよう

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

follow us in feedly
創業弘化元年。日本一古いおでん屋と言われるようになりました。 多くの作家や文化人にもご愛顧いただいたお店、鯨のサエズリなどの関東煮、たこの甘露煮、 そして錫の杯で、大切な方と粋な一献いかがですか?










PAGE TOP ↑